HパターンのMT車には意味はないんですが、何となく欲しくなるシフトインジケーター。ヤフオクで見ると世の中には代替品がなく、絶版となった製品がプレミア価格で取引されています。
日本に帰ったら車にシフトインジケーターをつけたいなという気持ちを持っていた時にタオバオを見たら売っていた1.28 inchの丸型メーター・・・これ、作れるな。
あと日本にいたら使えないけど、JLC.comを活用したらほぼワンストップで作れそう。
「JLC.comを駆使して作ってみよう」と考えて、約1ヶ月半で開発したのがMulti Mobility Meterです
何ができるのか?
内蔵するセンサー情報や車両から送られてくる情報(車速パルス、速度、OBD2のデータ)を活用しGセンサー表示や、作りたかったシフトインジケーターといった機能を実現しています。
またESP32をSoCとすることで、PCとUART通信をしてアセットコルサなどのシミュレーターで使えるメーターとしても活用できるようにしました。タッチパネルによる操作に対応。見た目はスッキリしているものの、スワイプ操作などを使うことで複数の表示や設定が容易にできるようになっています。
メーター表示はLovyanGFXを活用し、リアルタイムに且つ自由な表現ができるようになっています。速度、回転数そして、ギア比が分かればこのように現在のギアが何速かを判定して表示することができます。
またGセンサーを表示するためにこのデバイスの中にはBMI270が実装されています。このセンサ情報を使うことで車両の前後、左右方向の荷重を視覚的に確認することができるようになっています。

そして開発を進める中で、レーシングシミュレーターは外部のメーターに情報を送ることができることに気づきました。


このSimHubを使えばUART通信で外部のデバイスにゲーム上の車両の速度やエンジン回転数、他にもGセンサー、アクセル&ブレーキの開度といった情報が取得できるので、実際の車両データの代わりの情報を受け取ることで、シミュレーターをより楽しむためのデバイスとしてMMMを活用することも可能です。
ハードウェアの仕様について
サイズはφ50。後ろの取り付け部はφ41となっていて、市販されているφ60やφ52よりも小型になっています。筐体はHP社のMJF方式を使ったエンジニアリングプラスチック。加飾としてメーターのリングはアルミの削り出しで作っています。
3DプリントはJLC.com 。メーターのリングも同様に作ったのですが、仕様通りに作ることができず失敗。結果いつも通りお願いしているサプライヤーに依頼して作ってもらいました。



電子基板関して、ディスプレイは1.28 inch、240×240 pxの表示エリアを有します。
PCBはESP32-C3をSoCとしており、BMI270を内蔵センサとして実装しています。
もちろん12Vにも対応しているので、車両のアナログ信号を読めますし、電源もUSBだけではなくアクセサリー電源などから取得できるようにしています。


一応車に取り付けができるように板金部品の設計も行いました。これも市販の追加メーターのようなデザインで設計。中国本土向けのJLC.comはグローバルと違い板金部品の製造ができるので、この設計した板金もJLCで作ってもらいました。塗装込みでもかなりリーズナブルな値段。これが日本に来たら求めるクオリティ次第では他社から乗り換えしてしまう気がします。

開発を進めていくと、やっぱり車に取り付けたくなるわけです。
3Dスキャナーで私のランエボのAピラーをスキャン。それを元にデータを作成して、メーターカバーを作ってみました。サイズが小さいからこそレイアウトの自由度もあり、Aピラーに余裕で2個レイアウトも容易。これはいい感じ!

今後の展望
シフトインジケーターが欲しいという衝動から始まったこのプロダクト。開発を進めていくと色々な可能性があることに気づきました。
自動車の開発に携わる中で気になっていたのが、メーターで表示できる機能は増えるものの基本的な表示装置のコンセプトは変わらないんです。結果、機能が増えても選択肢が増えるだけ。
しかし、ユーザーがやりたいことは、法規で必須な情報を除き、自分で欲しいコンテンツを取捨選択して表示できることなのではないかと。
実際スマートフォンは同じで各々が情報を整理して最適化が可能です。さらにウィジェットを置くことも可能。この考え方を先んじて行なっているのが中国OEM。車に搭載されているHuawei Harmony OS、Flyme Auto OS、Xiaomi Hyper OSなどを見ているとウィジェットという形でユーザーが表示コンテンツをカスタマイズして表示できるようになってきてます。Xiaomiの車SU7に関しては、MMMと似たようなプロダクトがオプションで搭載できるようになっていました。
(私が開発を始めた時はXiaomi SU7の情報はなかったので、その後発表されて驚きました)
この考えに気づくと、今後もっと色々なコンテンツが出せるようにできる必要があるなと思いました。例えば・・・
・天気予報
・今向かっている方角
・時計(メーターについていなかったりする。オーディオレスだと時計がない)
・到着時刻(実家とか知っている道は別に地図表示は不要)
・ターンバイターン

ネットワーク経由で現在地を取得しました
試作Ver1での反省点を改善するため、現在Ver 2を開発中。すでにVer1で時計は実現しましたが、Ver2のソフトウェア開発では上記の表示をトライしていきます!